業務内容 公認会計士・税理士と司法書士による相続手続き

【生前贈与関連の改正について】

2024/04/24
【生前贈与関連の改正について】

2024年04月24日発行

令和5年度の税制改正で、相続発生時に相続税の計算上持ち戻す生前贈与の取扱いが変更されました。令和6年1月1日から適用されている改正内容を、改めて確認したいと思います。

暦年課税制度の「生前贈与加算」制度の見直し

<従来の生前贈与加算制度とは>

相続人が、生前に被相続人から贈与を受けていた場合、相続開始前3年以内の贈与については相続税の計算上持ち戻して相続税を算定する制度。

・3年以内の贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算。

・3年間に払っていた贈与税がある場合にはそれを控除して納税額を算定。

<改正内容>

生前贈与加算として持ち戻す期間が3年→7年へ延長されました。

相続開始前7年以内の贈与財産は相続税の課税価格へ加算(相続開始前4~7年前の贈与財産についてはその合計から100万円を控除した残額を加算)し、相続税を計算することとなります。

<適用時期>

令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産に係る相続税につき適用されます。

なお、持ち戻し期間は徐々に延長されていき、最終的に令和13年1月1日以後の相続については7年間が持ち戻されることとなります。

・令和6年1月1日~令和8年12月31日までの相続については、従来通り、相続開始前3年以内の贈与が加算対象

・令和9年1月1日~令和12年12月31日までの相続については、令和6年1月1日~相続開始の日までの贈与が加算対象

・令和13年1月1日以後の相続については、相続開始の日から遡って7年前の応当日から相続開始の日までの贈与が加算対象

<改正の影響>

生前贈与による相続税対策をしよう、という場合に、お亡くなりになる直前の贈与については、結局持ち戻されてしまって節税の効果が無くなってしまうため、なるべく早めの対策着手が求められていましたが、今後は持ち戻しの対象がより長い期間となるため、これまで以上に贈与の時期を意識して対策を行うことが必要となります。

「相続時精算課税制度」の見直し

<従来の相続時精算課税制度とは>

60歳以上の親・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与の際に使える特例。贈与時には特別控除により累計2,500万円までは贈与税がかかりませんが、相続発生時には生前に贈与を受けた財産を全て持ち戻して相続税の計算に組み入れて、相続税が課税される制度。

<改正内容>

従来、相続時精算課税制度を使用する場合には、暦年課税制度のような110万円の基礎控除は使えませんでしたが、相続時精算課税制度の場合にも110万円の基礎控除が適用できるように改正されました。

<適用時期>

令和6年1月1日以後に相続時精算課税制度を使用して贈与した財産に係る贈与税につき適用されます。

<改正の影響>

これまでは、不動産など、金額の大きな財産を移転するために相続時精算課税制度を使用すると、毎年の110万円の非課税が使えなくなるというデメリットがあったため、安易に特例を使用するとその後の相続対策に影響を及ぼす可能性があり、使い勝手が悪かったのですが、今後は積極的に相続時精算課税制度を使えるケースが増えると考えられます。