- 2025/07/28
- 【少額減価償却資産と一括償却資産の税務処理と償却資産申告の留意点】
2025年07月28日発行
【1. 概要】
中小企業者等が設備投資を行う際、節税策の一環として「少額減価償却資産の特例」や「一括償却資産制度」の適用を検討することがある。これらの制度は法人税法上、償却資産の通常の耐用年数に従った減価償却とは異なる特例的な取り扱いにより、初年度の損金算入額を増加させる効果がある。
一方で、これらの資産が地方税法上の「償却資産(固定資産税課税対象資産)」に該当するか否かの整理も必要であり、法人税の節税効果と償却資産申告義務の両面を理解したうえで、適切な処理を行うことが重要である。
【2. 制度の概要と税務上の取扱い】
(1)少額減価償却資産(租税特別措置法第67条の5)
- 資本金1億円以下等の中小企業者等に限り、1単位30万円未満の減価償却資産については、取得価額の全額をその事業年度の損金に算入することが認められる。
- 損金算入の上限額は、1事業年度あたり合計300万円まで。
- 資産の「一体性」があるものについては、個別ではなく一式として取得価額を判定する必要がある(法基通7-5-1参照)。
- 固定資産台帳への記載が形式的要件とされており、未記載の場合は否認される可能性がある。
- 実際の使用実態がない場合(取得のみで未稼働)は、減価償却の対象とならない(法基通7-1-3)。
(2)一括償却資産(法人税法施行令第138条)
- 全ての法人が対象で、取得価額が1単位20万円未満の減価償却資産については、取得年度から3年間で均等額を損金算入することが認められる。
- この制度には年間損金算入限度額の制限はない。
- 取得価額の認定や、資産の一体性判断は少額減価償却資産と同様の留意が必要。
- 固定資産台帳への記載も必要とされ、記載不備は形式要件不充足とされる可能性がある。
【3. 償却資産申告(固定資産税)との関係】
地方税法上、事業の用に供する償却資産は、市町村に対し償却資産申告書を提出し、固定資産税の課税対象となる。税務上の損金算入と、償却資産申告の要否は必ずしも一致しないため、以下の通り制度ごとに要否を整理する必要がある。
| 資産区分 | 償却資産申告義務 | 備考 |
| 少額減価償却資産 | あり | 地方税法上は取得価額に関係なく申告対象(10万円以上) |
| 一括償却資産 | 原則なし | 地方税法上「耐用年数が1年未満の資産」として扱われ、申告除外(地方税法施行規則附則7) |
| 取得価額10万円未満の資産 | なし | 地方税法上の非課税規定に基づく |
なお、少額減価償却資産については、法人税上は即時償却されて簿価がゼロとなっても、地方税法上は資産として課税対象となるため、償却資産申告漏れの原因となりやすく注意が必要である。
【4. 実務上の留意点と税務調査事例】
- 「セット販売」や「まとめ買い」により、資産が実質的に一体不可分と認定されると、個別ではなく合算価額での判定が必要。
- 固定資産台帳への記載項目(取得日、名称、用途、金額等)が不備な場合、形式要件不充足により損金算入を否認されるリスクがある。
- 実際に稼働していない資産(保管中・未使用)の即時償却計上は、税務上否認される事例がある。
- 償却資産申告書の提出忘れにより、後日申告勧奨や過少申告加算税の対象となることがある。
【5. まとめ】
少額減価償却資産や一括償却資産の制度は、中小企業にとって法人税の軽減策として有効であるが、適用に際しては形式要件・実態要件の両面において慎重な検討が必要である。また、法人税上の損金算入と地方税上の償却資産申告義務とは連動していないため、税目ごとに要件を整理し、適切に処理を行うことが求められる。
【参考資料】
〔少額の減価償却資産及び一括償却資産(令第138条及び第139条関係)〕






















