業務内容 公認会計士・税理士と司法書士による相続手続き

【会社が社長から土地を借りる場合】

2023/05/31
【会社が社長から土地を借りる場合】

2023年05月31日発行

≪前提≫

 会社が社長の所有する土地を借り受けて、その土地の上に会社所有の建物を建てるケースは多くあります。この場合、社長に対して、権利金や地代の支払いがなく無償で貸付を行っている場合には、多額の税金が発生する可能性があるためご注意ください。

≪権利金について≫

本来、建物を建てる等の目的のために土地を借りた場合には、借主が貸主に権利金を支払うことが慣行となっています。

→現実は、自分の会社に土地を貸すのに会社から権利金を受け取ることはしない。

→会社が権利金を支払わなかった場合には、借地権(土地を借りる権利)を無償で取得した、つまり会社がその分得をしていることになるため、課税対象になります(権利金の認定課税)。

◎権利金の適正額は?

土地の更地価額(時価)×借地権割合

例)土地の時価5,000万円×借地権割合60%=3,000万円

◎権利金を支払わなかった場合

・法人:借地権(資産) 3,000万円 / 受贈益(益金算入) 3,000万円 ★法人税が課税

・個人:課税関係なし。※みなし譲渡課税なし。

◎仮に権利金を支払った場合

・法人:借地権(資産) 3,000万円 / 現預金 3,000万円 →課税関係なし。

・個人:受け取った権利金相当額は、個人の不動産所得として課税。★所得税が課税

≪権利金の認定課税を回避するためには?≫

①        相当の地代を収受している場合

…権利金の代わりに、通常よりも高い地代(相当の地代)の収受があるため、権利金の認定課税はされません。なお、3年ごとに改定を行う必要があります。

「相当の地代」とは、土地の更地価額(時価)の年6%に相当する金額。

例)土地の時価5,000万円×6%=年300万円

・法人:地代家賃 300万円(損金算入) / 現預金 300万円

・個人:受け取った地代は、個人の不動産所得として課税。★所得税が課税

②        『土地の無償返還に関する届出書』を税務署へ提出する。

…イメージとしては、将来、貸主に土地を無償で返還するので権利金の課税はしないでください、という届出。提出期限は特になし。

≪土地の無償返還に関する届出書について≫

【要件】

・『賃貸借契約書』にて、将来、借地人が土地を無償で返還することを定めていること。

・貸主、借主のどちらか一方、もしくは両方が法人であること。

※個人間の場合には提出できない。個人間の賃貸借では「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」という通達(使用貸借通達)により、借地権の認定課税が避けられることになっています。

【留意点】

・地代は固定資産税の2~3倍以上に設定すること。=賃貸借契約に該当。

地代が無償であっても問題はありませんが、将来、土地所有者の社長に相続が発生した際に、土地の相続税評価額が高くなってしまいます。

固定資産税の2~3倍以上に設定しておけば、相続が発生した時に、土地の評価額は貸宅地として自用地評価額の80%で評価されます。さらに要件を満たせば特定同族会社事業用宅地として小規模宅地等の特例が使える可能性があります。

※「賃貸借」ではなく「使用賃貸」だと判断された場合には、「貸宅地」として評価することはできません。

なお、貸主と、借主である法人の株主が同一人物である場合、その法人の純資産価額に借地権評価額が算入されます。「土地の無償返還に関する届出書」を提出していても、借地契約が賃貸借契約の場合には、「自用地評価額20%」を借地権として同族会社の株価評価の際に計上します。