業務内容 公認会計士・税理士と司法書士による相続手続き

確定拠出年金制度の見直し(令和7年税制改正)

2025/04/25
確定拠出年金制度の見直し(令和7年税制改正)

2025年04月25日発行

≪制度の概要≫

1.確定拠出年金とは

 加入者自身が定期預金や保険商品、投資信託などを運用して、老後のための資金を自ら準備するための私的年金制度です。確定拠出年金には、事業主が掛金を拠出する「企業型年金(企業型DC)」、個人が加入して本人が掛金を拠出する「個人型年金(iDeco)」の2つのタイプがあります。

2.iDecoのメリット

・毎月5千円から1,000円単位で始められる。

・商品は自由に組み合わせて運用することができる。

・税制面で3つの優遇がある。

① 掛金が全額、所得控除になる。

② 運用益が非課税。

③ 受取時に税制優遇が受けられる。(一時金として一括で受け取る場合には「退職所得控除」、年金として分割で受け取る場合には「公的年金等控除」が適用され、一定額までは非課税になる。)

3.iDecoの注意点

・原則、60歳までは引き出しができない。

・掛金の変更は年1回のみ。

・毎月の口座管理手数料などがかかる場合がある。

4.NISAとの違い

NISAもiDeCo同様、資産形成のための制度ですが、iDecoが主に老後資金を準備するのが目的なのに対し、NISAは家計の安定的な資産形成を目的としています。

≪NISAのメリット≫

・引き出しはいつでも可能。

・運用益が非課税。(iDeco同様)

・非課税保有限度額(総額)1,800万円までは税金がかからない。

≪令和7年税制改正のポイント≫

iDeCoは、2025年に制度の大きな見直しが予定されています。改正内容は下記3点です。

1. 掛金上限額の引き上げ(予定)

 老後に向けた資産形成を促進し、企業年金の有無による限度額の差異を解消するために、掛金限度額の引き上げが行われます。

・第1号被保険者(自営業、フリーランスなど)

 現行は最大6.8万円/月 → 最大7.5万円/月

・第2号被保険者のうち、企業年金に加入している会社員

 現行は企業年金とiDecoの合算で5.5万円/月 → 最大6.2万円/月

・第2号被保険者のうち、企業年金に加入していない会社員

 現行は最大2.3万円/月 → 最大6.2万円/月

・第3号被保険者(主に専業主婦、主夫)

 最大2.3万円/月(変更なし)

2. 加入年齢の引上げ(予定)

iDecoに加入し掛金を拠出できる年齢が、現行の「65歳未満」から「70歳未満」に引き上げられます。

【適用時期(1、2)】

税制上は改正なし。確定拠出年金法などの改正を前提に実施。

3. 退職所得控除の見直し

 いわゆる退職金の「5年ルール」が「10年ルール」に変更されます。

「5年ルール」とは、例えばiDecoの一時金を受け取った後、5年以上経過してから退職金を受け取った場合には、別々に「退職所得控除」を適用することができました。

「10年ルール」では、この経過期間が5年から10年に変更されます。例えば、60歳でiDecoの一時金を受け取り、65歳で退職金を受け取った場合には、「退職所得控除」を満額利用できないため税金が増えてしまいます。

【適用時期】

令和8年1月1日以降に支払われる退職一時金から適用。

≪まとめ≫

iDecoは税制面で多くのメリットがあり、長期の資産形成に有効な手段ですが、法改正の影響も理解したうえで、適切な対策や見直しを行うことが重要です。