- 2025/05/28
- 中小企業者等の賃上げ促進税制の改正点
2025年05月28日発行
政府は企業による賃上げを促進するために、一定の賃上げをした法人に対して法人税を減額する賃上げ促進税制を導入しています。2024年4月1日以降に開始する事業年度(決算月の変更が無ければ2025年3月決算)から一部改正があり、適用の可能性が大きくなりました。実務上も重要な変更があります。
大企業向け、中堅企業向け(新設)の賃上げ促進税制もありますが、中小企業者向けの要件が一番計算しやすく、かつ優遇幅が大きいため、適用できる場合には中小企業者向けの税制を適用します。
・前提要件:青色申告をしていること。
1,減額される法人税
①②のいずれか小さい方の金額が当期の法人税から減額される。

2,適用の判定要件:前期と比較して、給与総支給額が1.5%以上増えたか。

→満たせば賃上げ税制の適用あり。税額控除率:+15%(ベースの%)
※役員や役員の身内に支払った給与は総支給額から除かれます。
※短期アルバイトなど、一方の期にしか支給していない人の分の給与も含みます。
3,ベース%に対する上乗せ要件 3種類(+0%~+30%)
(1)前期と比較して、給与総支給額が2.5%以上増えたか。

→満たせば+15%
(2)教育訓練費
①前期と比較して、教育訓練費が10%以上増えたか。

かつ
②当期の給与総支給額に占める教育訓練費の割合が0.05%以上であるか。(新設)

→①②とも満たせば+10%
(3)一定の認定を受けた企業であるか。(新設)
女性活躍推進企業などとして厚生労働大臣の認定を受けること。(くるみん、えるぼし など)
→満たせば+5%
4,2024年4月1日以降の主な改正点
① 賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しが可能となった。
せっかく賃上げをしようとしても、どうせ当期が赤字なら法人税は0で、減税を受けられないので、賃上げするメリットがないと考えられていました。今後は5年以内に黒字化すれば(法人税が発生すれば)賃上げ税制を適用できるチャンスがあります。
実務上は、これまでと異なり、当期が赤字(法人税が0円)であっても適用判定要件を満たせば、未控除額(上記1,①の金額)を繰越すための申告書付表※を作成する必要が生じます。
※別表六(二十四) 付表一 の下部「翌期繰越税額控除限度超過額の計算」の欄
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2024/pdf/06(24)-f1.pdf
② 上乗せ要件である、教育訓練費の要件に最低金額が設定された。(上記3,(2)②)
例えば年間で1億円の給与支給に対して、教育訓練費が50,000円以上であれば要件を満たすため、さほど難しい要件ではないです。
5,実務上の変更点
(改正前)
・赤字や欠損金があって法人税が0であれば賃上げ税制の考慮は不要。
(改正後)
・赤字黒字に関係なく、従業員を雇っている法人については、前期と当期の従業員への給与支給額を抜き出して、1.5%以上増加しているかの判定が必要。
参考:中小企業庁 中小企業向け「賃上げ促進税制」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushinzeisei2024.pdf
