- 2026/06/26
- 【国税庁の次世代システム「KSK2」と税務調査のこれから】
2026年06月26日発行
1.はじめに
国税庁では、令和8年9月の本格導入に向けて、次世代の国税総合管理システムである「KSK2」の開発が進められています。KSKシステムとは、全国の国税局や税務署をネットワークで結び、申告・納税・徴収などに関する情報を管理する国税庁の基幹システムです。国税庁レポート2025では、KSK2について、紙からデータへの移行、税目別・事務系統別に分かれているデータベースやアプリケーションの統合、大型コンピュータ中心の仕組みからオープンシステムへの刷新、という考え方が示されています。
今回のテーマで重要なのは、KSK2を単なるシステム更新として見るのではなく、今後の税務行政や税務調査のあり方に影響する基盤整備として捉えることです。
2.KSK2とは何か
KSK2は、国税庁が保有する情報を、よりデータ中心に扱えるようにするための次世代システムです。
これまでの税務行政では、紙の資料や税目ごとに分かれたシステム、部署ごとの事務処理が一定程度残っていました。KSK2では、こうした縦割りの仕組みを見直し、申告、納税、徴収、調査選定などに関する情報を、より横断的に活用できる環境を整備することが想定されています。
国税庁の資料では、現行システムと令和8年度以降の次世代システムのイメージが図で示されています。そこでは、税目別・事務系統別に分かれていた情報を統合データベースに集約し、BIツール、BAツール、AIなどの活用系システムにつなげるイメージが示されています。

3.KSK2とAI税務調査の関係
注意が必要なのは、KSK2そのものが「AI税務調査システム」というわけではない点です。
KSK2は、あくまで国税庁の基幹システムを刷新するものです。一方で、国税庁はすでにAI・データ分析を調査対象の選定などに活用しています。たとえば、令和6事務年度の法人税等の調査事績では、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出し、その結果に申告書や国税組織が保有する資料情報などを加えて分析・検討し、最終的には調査官が調査実施の要否を判断する流れが示されています。
つまり、今後の税務調査は、AIが自動的にすべてを判断するというよりも、国税庁が保有する情報や外部情報をデータとして整理し、AIや分析ツールを使って調査必要度の高い先を効率的に把握し、最終的には調査官が判断するという形に近づいていくと考えられます。

4.今後の税務調査で想定される変化
KSK2の導入により、今後の税務調査では、税目ごと・部署ごとに分かれていた情報が、より横断的に確認されやすくなると考えられます。
たとえば、法人税だけでなく、消費税、源泉所得税、代表者個人の所得税、資産移転に関する情報などが、従来以上に一体的に確認される可能性があります。
特にオーナー企業では、法人と代表者個人との間の取引や資金移動について、整合性がより重視されると考えられます。具体的には、次のような項目です。
・役員報酬、役員賞与、貸付金、借入金
・法人から代表者個人への支出
・外注費、業務委託費、交際費などの実態
・代表者個人の口座に入金された売上
・法人所有資産と個人利用の関係
・消費税の課税区分やインボイス対応
・源泉所得税の徴収漏れ
・海外取引やネット取引に関する情報
これらは従来から税務調査で確認される項目ですが、今後はデータの蓄積・分析が進むことで、違和感のある取引や、他の情報と整合しない処理が、より把握されやすくなると考えられます。
5.税務調査対応で重要になること
今後重要になるのは、「税務署に見つからないようにする」という発想ではありません。
むしろ、日々の取引について、なぜその処理をしたのかを説明できる状態にしておくことが重要です。
たとえば、外注費であれば、単に請求書があるだけでは不十分な場合があります。契約内容、業務の実態、成果物、支払の流れ、相手先との関係などを説明できる資料が必要になります。
交際費や会議費であれば、誰と、何のために、どのような目的で支出したのかが確認できるようにしておくことが大切です。
役員や代表者との取引についても、法人側の処理と個人側の申告内容が矛盾しないようにしておく必要があります。法人側では経費処理している一方で、個人側では収入として申告されていない、あるいは実態として個人的支出に近いものが法人経費になっている、といったケースは、今後より確認されやすくなる可能性があります。
6.実務上の備え
KSK2の導入に備えて、企業側で特別なシステムを導入しなければならないという話ではありません。
まずは、通常の経理処理を丁寧に行い、帳簿、証憑、契約書、稟議書、メール、入出金の流れなどを整理しておくことが重要です。
特に、次の点は日頃から意識しておくべきです。
・請求書や領収書だけでなく、取引の実態が分かる資料を残す
・法人と代表者個人の資金移動を明確にする
・経費処理の根拠を説明できるようにする
・消費税の課税区分を安易に判断しない
・源泉所得税の対象となる支払いを確認する
・海外取引やネット取引について、契約・送金・請求の流れを整理する
・電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を形式だけで終わらせない
税務調査では、最終的には「その取引に実態があるか」「処理に合理性があるか」「他の資料と整合しているか」が確認されます。KSK2やAI・データ分析の活用が進むほど、形式的な書類の有無だけでなく、全体として説明がつくかどうかが重要になると考えられます。
7.まとめ
KSK2は、国税庁の基幹システムを刷新する取組であり、税務行政のデジタル化を支える重要な基盤です。KSK2の導入により、申告、納税、徴収、調査選定などに関する情報が、よりデータ中心・横断的に活用されることが見込まれます。
また、国税庁ではすでにAI・データ分析を調査対象の選定などに活用しており、今後は調査必要度の高い法人や個人を、より効率的に把握する方向に進むと考えられます。
そのため、企業側としては、特別な対策をするというよりも、日々の取引について、帳簿・証憑・契約書・資金移動の流れを整理し、法人と個人、法人税と消費税、会計処理と税務処理の整合性を保つことが重要です。
今後の税務調査対応では、「帳簿に載っているか」だけでなく、「取引実態を説明できるか」「他の税目や個人側の申告内容と整合しているか」が、より重要になると考えられます。






















